事故車という言葉をよく耳にします。
しかしながら厳密にいうと事故車という言葉は存在せず、正確には修復歴車といいます。
事故車とは一般的に修復歴がある車のことをわかりやすく伝えるために便宜的に使われる言葉だと覚えておくとよいでしょう。
では修復歴車とはいったいどんな車のことを指すのでしょうか。
目 次
修復歴車とは?
通常、自宅の駐車場で車庫入れの際車を塀にぶつけてしまい、板金で直したといった程度の修理では修復歴車となることはありません。
確かに中古車として買い取ってもらうような場合に査定金額に影響することはありますが、これは単に修理した履歴が残るというだけで、修復歴車ではありません。
実際に修復歴車となるのは、以下のような箇所を修復したりあるいは交換した場合に限られます。
- フレーム (サイドメンバー)
- クロスメンバー
- インサイドパネル
- ピラー
- ダッシュパネル
- ルーフパネル
- ・フロア
- トランクフロア
- ラジエータコアサポート
このうち1箇所でも修復あるいは交換していれば修復歴車となります。
これらの箇所は車の中でも重要な骨格にあたるフレームの部分ですから、修復や交換をしていれば比較的大きな事故を経験している車であるといえます。
修復歴車の具体例
では具体的にどのような事故を起こすと修復歴車となるのでしょうか。
以下のような事故を起こすとすべてが修復歴車となる、あるいはならないとは限りませんが、一定の目安にはなります。
修復歴車とならない場合
- 冒頭のように自宅の駐車場で車庫入れの際車を塀にぶつけた。
- 走行中追突されたがバンパーのみの交換でトランクには影響がなかった。
- 走行中前の車に追突してしまい、バンパーやライトを交換したものの、クロスメンバーやラジエータコアサポートには影響がなかった。
修復歴車となる場合
- 右折しようとしたとき直進車に気が付かず衝突事故を起こし、ドアの交換とピラーの修復をした。
- 電柱にぶつかり、バンパーとボンネット、ライトを交換のほか、クロスメンバーの修復をした。
このように事故を起こしても部品の交換や板金のみで影響がフレームにまで至っていない場合は修復歴車とはなりません。
買取査定額を不当に引き下げられないために
とはいえ、このような知識を持っていても日常ではあまり役立つものではありません。
ただし、いざ車を売却するとなった場合には役に立つことがあります。
中古車買取店に買取を依頼した場合、修復歴車は修復歴車でない車と比較したときにおおよそ7~8割程度の査定額になってしまいます。
これは致し方のないことですが、買取業者の中には、単にドアを交換しただけなのに、修復歴車として扱われるケースがあるのです。
ここで常套句として用いられるのが、便宜的に使われている事故車という言葉です。
買取業者は当然ことながら車を安く仕入れ高く売りたいので、修復歴車ではない修理の履歴があることを事故車であるという表現をして、査定額を安く提示してくることがあります。
しかし、実際には査定に影響するような修理履歴ではないのです。
修復歴車の定義を知っているだけでも、このように不当に査定額を引き下げられる事態を未然に防ぐことができます。
事故の際損害を被らないとために
また実際に事故を起こし、自分の過失割合が低く車の修理代を弁済してもらう際にも修復歴車の定義を知っていることは役に立ちます。
事故の程度が大きく自分の車が修復歴車となってしまった場合には当然買取の査定額も下がることから、原状を回復する以上の損害を被っていることになります。
このようなときには、日本自動車査定協会などで「事故減価額証明書」を発行してもらうと、原状回復の修理代以外にも、事故によって修復歴車になってしまった場合と事故が起こらなかった場合の査定額の差額分を請求することができるのです。
修復歴車の定義を知らないと、結果的に査定額の差額分が補償されず、自分には非がないにもかかわらず、間接的に損害を被ることになってしまいます。
修復歴は正しく申告
ところで、修復歴車ではない車を事故車として査定額を引き下げられるのとは反対に、実際修復歴車である場合には、そのことを隠して買取依頼をしてはいけません。
修復歴がある車でも修復してしまえば一見してわからない程度に修理することができます。
しかしながら、売却の際に把握している修復歴は申告する義務があります。
これを怠ると後日事実が発覚した際に、「事後減額要求」をされる可能性があります。
これは民法に定められているもので、そもそも車の査定をする査定士はプロなので、申告しなくても、発覚する可能性は高いと考えたほうがよいでしょう。
修復歴車を売却する際には不当に査定額を引き上げるのではなく、修復歴車であっても高い金額を提示してくれる業者を探しましょう。
このように、修復歴車の定義は通常あまり意識することはありませんが、いざというときに知っていると役に立つ知識です。
事故は起こさないことに越したことはありませんが、万が一起こってしまったときには正しい知識を身につけておくと、損害を最小限に抑えることができます。